大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 昭和28年(行)20号 判決 1953年12月15日

愛知県葉栗郡木曾川町大字黒田字宝光寺東

原告

野津勇

愛知県一宮市明治通り二丁目四番地

被告

一宮税務署長

右指定代理人

干場義秋

八木代吉

右当事者間の昭和二十八年(行)第二〇号課税処分取消請求事件につき、当裁判所は昭和二十八年十二月三日終結した口頭弁論にもとづき次のとおり判決する。

主文

原告の訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は「被告が昭和二十七年五月十五日原告に対してなした原告の昭和二十六年度分所得金額を金十五万円と決定した処分を取消す。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、その請求の原因として次のとおり述べた。

(一)  原告は昭和二十五年八月十五日商取引において詐欺の被害を受けたため、昭和二十六年度より廃業の止むなきに至り、被告宛廃業届を提出したのであるが、被告は昭和二十七年五月十五日原告の昭和二十六年度分の所得金額を金十五万円と決定し、その旨原告宛通知した。

(二)  よつて原告は昭和二十七年九月一日被告宛再調査の請求をなしたところ、同年九月四日棄却せられたため、原告は更に昭和二十七年十二月一日名古屋国税局長宛審査の請求をしたが、昭和二十八年六月二十六日右審査の請求を棄却する旨の決定があつた。

(三)  しかしながら前述の如く原告は既に廃業していたのであるから被告の原告に対する昭和二十六年度分所得金額金十五万円とする決定は違法であるから、その取消を求める。

(四)  なお本件訴の出訴期間を遵守しえなかつたのは、当初出訴期間は六箇月と誤信していたが、その後昭和二十八年九月二十四、五日頃に至り出訴期間が三箇月であることを知り早速手続を進めようとしたが、たまたま病気にかかり又台風の被害等もあり期間内に手続をなしえなかつたものであるが、結局は原告の過失にもとづくものである。と。被告指定代理人は、主文同旨の判決を求め、次のとおり述べた。

(一)  原告主張の事実のうち(一)で主張する如き一宮税務署長の決定のあつたこと及び(二)主張の事実は認めるがその余の(一)及び(三)で主張する事実は否認する。

(二)  名古屋国税局長は原告の昭和二十六年度分所得税に関する審査の決定を昭和二十八年六月二十七日附をもつてなし、右決定は翌二十八日原告に送達された。従つて原告は所得税法第五十一条第二項にもとづき審査の決定の通知を受けた日から三箇月内に訴を提起すべきにもかかわらず、本件訴は昭和二十八年十月六日に提起されているから、出訴期間を経過した不適法な訴として却下されるべきである。と。

被告指定代理人は乙第一号証を提出し、原告は、その成立を認めると述べた。

理由

原告が被告より昭和二十七年五月十五日原告の昭和二十六年度分の所得金額を金十五万円とする旨の決定を受け、これに対し原告は同年九月一日被告に対し再調査の請求をなしたところ、同年九月四日被告において右請求を棄却したので、原告は更に名古屋国税局長に対し昭和二十七年十二月一日審査の請求をなしたところ、右請求は昭和二十八年六月二十七日附をもつて棄却せられたという事実は当事者間に争がない。従つて原告は所得税法第五十一条第二項にもとづき右審査棄却決定の通知を受けた日より三箇月内に訴を提起すべきものなるところ、成立に争のない乙第一号証によれば原告は右審査棄却決定の送達を昭和二十八年六月二十八日に受けているから、出訴期間は同年九月二十八日をもつて満了するにもかかわらず、本件訴は昭和二十八年十月六日附当裁判所に提起されたものであることは当裁判所に顕著な事実である。しかして原告において右出訴期間を遵守しえなかつたことが原告の過失にもとづくものであることは同人の明かに認めるところである以上、本件訴はこの点において不適法なるものであるからこれを却下すべきものと認め訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 山口正夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例